やとわれ編集長 岡井のボート事件簿 FILE2 だいこんおろし事件
【FILE2 だいこんおろし事件】
ボートレース史上「最も有名なレース」とはどのようなレースでしょう。スター選手がぶっちぎりのゴールを決める、一流選手がギリギリの競い合いをみせるSG等、名勝負と呼ばれる展開はいくつも存在しますが、ボートレースファン以外の認知を含めると「最も有名なレース」と言えばこのレースではないでしょうか。
『だいこんおろしの彼女募集記念レース』
この名でピンと来る人は多いでしょう、2003年2月22日戸田ボートレース場でおこなわれたこのレースは動画サイトやテレビ番組でも度々取り上げられており、ネット上の知名度は抜群。ボートレース関係以外でも「放送事故」「笑える動画」関連で知っている人も多いと思われます。
一体どんなレースだったのか、ことわっておきますがレース内容自体は至極全うなものです、ただその珍妙なレース名がちょっとした事件をおこしてしまったのです。
■寄せては返す『だいこんおろし』
それはレジャーチャンネルでのレース放送中に起こりました。出走前に情報を伝えるいつものシーンでのこと、出走表が画面に映し出されながらアナウンサーがレース情報読み上げます。
第11レースのタイトルは「だいこんおろし」の彼女募集記念レースとなっています。このタイトルには「だいこんおろし」38歳、会社員、群馬県南部在住、ボートくっ……ボートビア岡部を始め(笑)、桐生、戸田を愛する男(笑)、人柄は良いのに何故か女性に縁が無い。ここいらで、人生というレースで万舟を取って欲しい。というおおいわのぼる様からのメッセージが込められています。なお、だいこんおろしさんについて(笑)詳しく知りたい方は(笑)……。
~長い沈黙~
なお、だいこんおろしさんについて詳しく知りたい方は(笑)ご覧のアドレスまでアクセスして下さい。
文章に起こすとこんな感じになってしまうのですが、とにかく全編にわたり女性アナウンサーが笑いをこらえており、動揺しているのがありありと伝わります。吹き出してしまうのを必死にこらえながら、震え声で原稿を読み上げており、長い沈黙のシーンで限界を迎えながらなんとか呼吸を整えたことは想像に難くありません。私も一つの文章で“(笑)”をこんなに多用したのは初めてです。
なんというか、アナウンサーを笑わせようとして書いたものではないとは思えるのですが、そこに「だいこんおろし」というフレーズが絶妙に合わさった結果、ツボにはまってしまったのでしょう。いや、ズルいですよこんなの、だいこんおろしが彼女募集してるって冷静に考えようとするほど面白いですからね。佐藤さんの彼女募集記念とかでもそこそこ面白いのに、だいこんおろし持ってきちゃダメですよ、頭の中で38歳のだいこんおろしが彼女欲しいなーって言いだしたら気になって仕方ないでしょう、せめてサンマの方なら我慢できたのにとか思ったらもう笑いの無限地獄です。絶妙かつ奇跡のフレーズ、それがだいこんおろしの彼女募集記念レース。
■愛されて『だいこんおろし』
この『だいこんおろしの彼女募集記念レース』というレース名ですが、いわゆる通称ではなく正式なレース名。これは冠協賛レースとなっており、協賛金を支払って命名権を買った人によって名付けられたレースなのです。企業が宣伝のためにドーム球場に自社名をつけたりするように、ボートレースでも協賛金を払うことによって「◯◯誕生日記念レース」「◯◯結婚記念レース」みたいな名前を付けることができる場があります。(特定選手の応援や公序良俗に反するものは不可)
調べてみるとボートレースファンの仲間がだいこんおろしさんへのサプライズとして協賛レースにしたようで、当のだいこんおろしさんを含めおおいに盛り上がったそうです。気を良くしたのか実はその後もエスカレートしていき、レース名が「第4回群馬のヨン様ことだいこんおろしの彼女募集記念」になったり、PR内容にも流行りの芸人ネタが取り入れられていきました。
38歳のだいこんおろしさんは完全にみんなのオモチャにされていますが、この頃になるとボートファンにも知られた存在になっており、アナウンサーもスムーズに読み上げ積極的に応援していたそうです。形はどうあれ間違いなく愛される存在となっただいこんおろしさん、こんなに愛されているのに彼女無しなのは何故なんだ。
■フォーエバー『だいこんおろし』
その後だいこんおろしさんは無事(?)結婚されたそうです。そしてだいこんおろしの彼女募集記念レースは今なお語り継がれ、今後も有名レースであり続けるでしょう。
冠協賛レースは現在も時折募集されているので、記念のレースをしてみたい方、彼女が欲しい方、アナウンサーを笑わせたい方は各ボートレース場の情報をチェックしてみてはいかがでしょうか。結婚できるなら私も協賛して彼女募集記念レースを開催してやろうと思います。