やとわれ編集長 岡井のボート事件簿 FILE10 待ったなし!? 前検遅参事件

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やとわれ編集長 岡井のボート事件簿

【FILE10 待ったなし!? 前検遅参事件】

 

ボートレースのスタート時には「フライング」と「出遅れ」が存在し、違反した選手はレース欠場となります。しかしそれ以前に「遅刻」が原因での欠場があることをご存じでしょうか。当然ですが選手がレース場に居なければ出場できません、ですが本職たる選手がレースに出場できないほど遅刻するなんてことがあるのでしょうか、あるんです。

 

厳しい門の名は前検

ボートレース、競輪、オートレースの開催初日の前日には検査があります。それは競技の公正性や安全性のために必要な検査であり、正式には前日検査といいます。

 

▲選手自身の身体検査の他、ボートの検査もあります

 

出場レーサーは、レースの開催前日にレース場に集合しなくてはならない。レース場に到着すると、私物検査、身体検査などを受け、携帯電話などの通信機器はレース場に預ける必要がある。全レーサーが集合したのち、ボートとモーターの抽選を行う。その後、ボートとモーターを受け取ると、試運転や前検航走(スタート練習、タイム測定)などを行う。
この検査のことを前検(前日検査)という。決められた時刻までに集合しない場合は出場停止になる上に、厳しい罰則が科せられる。(BOAT RACE GUIDE LEVEL.1 前検(前日検査)より)

 

そう、この前検に間に合わないと出場停止のうえ厳しい罰則が科せられます。ちなみに一度前検を終えた選手は、怪我等で通院する必要が生じた場合や、レースが続行不可能になる等の日程打切りなどで管理解除されるか、開催節が全日程終了するまではレース場外への外出が一切不可能となります。ホームシックにかかり「もうやだおうち帰る」と泣き叫んでもおいそれとは出られない虎の穴なのです、いや、水上なのでウツボとかの穴かもしれません、語呂が悪い。

 

レース前から走ってターンしてフルスロットル

その珍事は2015年3月の「防長交通杯争奪戦」で起こりました。

徳山で開催されるレースに参加しようと新幹線で移動していた3人のボートレーサー。予定していた時間に徳山駅に到着……せずそのまま通過してしまいました。なぜ、どうして、知らぬ間に行先不明のミステリーツアーが開始してしまったのでしょうか。いえ、そもそもこの新幹線は徳山駅に停車する予定がありませんでした、意地悪でもミステリーでもなくそもそもそういう便なのです。

乗車した選手達は把握していなかったようですが、ダイヤ改正により以前まで停車駅だった徳山が通過駅へと変貌を遂げてしまったのです。

 

徳山駅を通過してレース場からみるみる遠ざかっていく新幹線、知らずに乗り込んでしまった選手たちの心情とはいかなるものでしょう、スムーズに通常運行を続ける新幹線も彼らにとっては悪夢の暴走特急です。「ちょ、待てよ」くらいは言ったのでしょうか、いや、実際本人たちにとっては笑いごとではないとは思いますが。

 

次の駅で降りて大急ぎで引き返したとのことですが、この時の彼らはいつものレースよりも鋭い、ターンマークをえぐらんばかりの急旋回を決めたことでしょう。

 

▲おそらく降りてからの緊急ターンを決めたはず

 

この例の他にも過去数回選手が遅刻するケースがあったそうです。それが交通トラブルなのか寝坊なのか、理由が明確でないものもありますが、遅刻選手は前述のように前検遅参として懲罰委員会の審議にかけられ、欠場等の重い処分が下りました。

 

メチャメチャきびしい人達がふいに見せたやさしさ

基本的に前検遅参の選手は理由如何にかかわらず欠場となりますが、悪天候や天変地異などによる交通機関の乱れが原因の前検日遅参については選手責任外として懲罰委員会の審議対象にならない場合もあります。原則的に厳しい前検ではありますが、事情を考慮してくれることもあるのです。都会の人ごみ肩がぶつかってひとりぼっちな気持ちになる必要はありません。

 

その他前検の身体検査が体調不良によって不合格になった例もあります、もしかすると選手は出場する気だったかもしれませんが、これも安全にレースを開催するため、健康で長く選手生活を送ってもらうためには無理をさせるわけにはいかないのです。

 

私の学生時代、健康診断の際にクラスの女子が「朝食を抜いてきた」「アタシなんて昨日の昼から食べてない」と話しているのを聞いた担任の青柳先生が「おまえらの体重にクラスのイケメンは興味が無いから健康のためにちゃんと食べろアホが」と言い放ったのも厳しいなかのやさしさでした。ただ、伝え方を考えなかった青柳先生はクラスの女子に激しく嫌われました、思春期の生徒に伝える方法を事前に考えておくべきだったのかもしれません。

 

伝え方を考えておくことは大切だし、前検にしっかり間に合う備えも大切なのです。

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岡井モノ

やとわれ編集長。だいたいわかってない。 twitter→@shopping_owl

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