やとわれ編集長 岡井のボート事件簿 FILE12 いま何周目? 周回誤認事件

連載
やとわれ編集長 岡井のボート事件簿

【FILE12 いま何周目? 周回誤認事件】

「さて、現在何問目でしょう?」

 

こうした問題はクイズ番組で時折に遭遇する場面ですが、客観的にみている番組視聴者からは簡単な問題に思えても、緊張と集中のさなかにある本人にはなかなか難しい問題だったりするようですね。何か考え事をしながら歩いて目的地を通り過ぎたり、スマホに熱中していて電車を乗り過ごしたりという場面は皆さんにも経験があるのではないでしょうか。

それが日常的に行われている行動である場合も意識の外にある場合が多いでしょう。「今朝階段はどっちの足から上がった?」「昨日の電車で隣に座ったのはどんな人?」などと聞かれた場合、即答できる人の方が少ない気がします。さらに「人間は何のために生まれ、何故あらそうのか」みたいな質問なんかもなかなか答えられませんし、「赤ちゃんはどうやって生まれるの?」と聞かれても返答に困る場面が多いのではないでしょうか。それは違うか。

 

ボートレーサーは当然ながら日常的にボートレースに参加しているわけであり、真剣勝負が日常であるとも言えます。きわどいラインを狙うスタート、ライバルたちとのポジション争い、第1ターンマークでの攻防、それらに集中するあまり忘れてしまうこともあるようです。そう、いま何周目かを。

 

■レースが終わっ……てない!?

激しいレースのさなか、不可解に突然減速するボートが一艇。一体どうしたんだろう、キャビった(※キャビテーションのこと。水中の気泡によってプロペラが空転状態になり推進力がなくなって減速することをいう。)か? それともボートの故障? そうこうしているうちに再加速してレースに復帰、下位でゴール。

何があったのかと言うと、レースが終わったと思い違いをした選手がスロットルレバーを離して減速してしまう場合があるのです。そして周囲の選手がビュンビュン追い抜いていき、当の選手が気づいた時にはもう手遅れというわけです。うっかりで済ませるにはあまりに大きな落とし穴。

▲見えてる落とし穴に収まっていく感じでしょうか。

本来勝てていたレースをこれで落としてしまう場合もあるので選手としてもショックでしょうが、舟券を買って応援していたファンからするとそれはもう納得できない事態でしょう。レース展開とは関係の無い選手の不注意で結果が変わってしまうのだから、たまったものではありません。たとえば上司から「なんか手違いでキミの給料半分になったよ」とか言われても納得できるわけありませんし、「これが給与誤認だよ、テヘッ☆」などと言われようものならその場で殴りかかってしまうかもしれません。そのため周回誤認とされた選手には即刻帰郷等の厳しい処分が待っています。

 

周回誤認はその疑いを含めればレース史上何度も起こっています。ここで疑いというのは、選手も厳しい処分が待っているのがわかっているので、「ペラに何かを巻き込んだ」「モーターの不調があった」と言った別の理由を主張する選手もいるからです。

しかしボート同士の接触も無い場合に減速が起これば間違いなく周回誤認が疑われます。特に3周目に入った直後なんかだともう状況証拠が揃い過ぎているので、名探偵でなくともあれれーおかしいぞーと疑われて即刻帰郷になるケースがあります。該当の選手がピットに帰る時なんかは取り調べに招集される犯人みたいで生きた心地がしなさそうです。

 

■三者三様三失格の珍レース

ここで周回誤認を含めた3選手が別の理由で失格した珍しいレースをご紹介しましょう。

2011年9月9日浜名湖7Rでの出来事です。

 

第1ターンで果敢にマクりにいった6号艇が内の2号艇と接触、後続の5号艇も影響を受けて体制を崩してしまいます。ボートが腹を見せて転覆し、立て直しの厳しい6号艇は失格、しかし2号艇と5号艇は失格とならず遅れながらもエンジン再始動。完走を目指します。その後は6号艇と救助艇を避けながらレースは続き、3-1-4のかたちで上位はゴール。そしてかなり遅れながらも5号艇が最終2マークに差し掛かります。

「5号艇!? どうした、ちょっとこれは……」とアナウンサーの声もむなしく、5号艇はそのままピット方向に直進してしまいます。結果後続の2号艇が先に旋回してゴールに向かい、慌てて大回りをした5号艇も続きます。転覆のアクシデントがあって動揺したのか、5号艇が3周を終える前に誤ってレースを離脱しようとしてしまったと思われるレースでした。

 

結果としてこのレースは6号艇(転覆)・2号艇(不完走)・5号艇(周回誤認)という3人の失格選手を出しましたが、その全てが別の理由という珍しいレースでもありました。周回誤認が舟券の結果に関わらなかったのが不幸中の幸いと言えるかもしれません。しかし5号艇はしっかり走っていれば完走はできた可能性が高いだけに、冷静に状況判断をすることの大切さがこのレースでわかったような気がします。

 

私もよく自分の置かれている状況がわかってるのかと叱られているので、現実誤認をしないよう気を付けたいと思います。

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岡井モノ

やとわれ編集長。だいたいわかってない。 twitter→@shopping_owl

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