やとわれ編集長 岡井のボート事件簿 FILE33 パーツチェンジャー事件

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やとわれ編集長 岡井のボート事件簿

 

【FILE33 パーツチェンジャー事件】

どうもみなさんごきげんよう、岡井です。アスリートたるもの使用する備品にも気をつかうもの。それぞれが実力を発揮できるよう入念な整備がおこなわれますが、そんななかで起こった珍事件を今回はご紹介しましょう。

 

今日のボートレースにおいて各選手が使用するボートは全て同等のもの。これはマシンの性能差ではなく、選手の実力や戦略が反映されるように定められたルールと言えます。しかしモーター等の整備や細かな部品交換は認められており、調子のイマイチだった選手が様々なメンテナンスを経て上位に浮上する、なんていうのもボートレースの醍醐味。操縦テクニックだけでなく、整備力が高いとされる選手も存在するので、そのあたりに注目してみるのも面白いです。

行われるのはあくまで調子を整える意味での整備。ミニ四駆感覚でなんでも改造できるものではありません。ボートの性能を大きく変えてしまうようなモーターの出力アップや、ボート本体の形状変更は認められませんし、車高を低くしてウーファー積んでダッシュボードの上に白いフェイクファーを置くなどもってのほかです。

 

しかしそうした整備が一つ違うだけでも0.01秒を争うボートレーサーにとっては大切な仕事ですし、こればかりは他人まかせにはできません。……できないはずなんですが、知らぬ間に自分のボートが整備されていることならありました。

 

■整備したのはどのボート?

2007年11月22日 浜名湖 6R

この日はSGである浜名湖チャレンジカップの3日目。期待の1号艇は展示を終え、ファンも思い思いの舟券を購入していきます。A1選手ばかりが出場するSG、進入は展示通りになるのかなどとレースの開始を待っていると、思いもよらないアナウンスが流れます。

「次の6R、1号艇は欠場となりました」

えっ、なんで? 展示では普通に走ってたけどどうしたの? ざわつく場内をよそに、事件はピット内で起きていました。

 

6R出場用に待機していた1号艇のペラを、次の7R出場予定だった選手が誤って交換してしまった、というのが事の真相。交換した選手も悪意は無く、うっかりやってしまったということらしいのですが、前述したように展示後の変更は「展示後の状態変更」の違反にあたるため、6Rの1号艇はそのまま選手責任外の欠場となりました。そして7Rに出場予定だった件の選手は「内規違反」のため7Rを選手責任の欠場および即刻帰郷、さらに出場停止3カ月と当該場1年間出場停止という厳しい処分が下されたのです。

SGにおいて2レース続けての1号艇欠場という現象もなかなか珍しいですが、その理由が「ボートを間違えて部品交換してしまった」というのはそれ以上に前代未聞の珍事でした。

 

■浜名湖のメンテ好き小人

自分の知らないうちに道具のメンテナンスがされている、なんていうのはファンタジーの世界です。もし誰もペラ変更に気付かずにレースに出場していたらどうなったんでしょう、奇跡的に噛み合った結果ペラがちょうどイイ感じになって優勝、浜名湖には交換好きの小人がいるなんて伝説になったかもしれません。

 

▲こんな交換好きな小人は多分いません

現実にはピット内には多くの人が出入りしますし、部品交換作業を誰にも気づかれずにおこなうということは不可能でしょう。逆に悪意をもって他の艇に細工をするなんてこともできませんし、仮にやったとしてもすぐに発覚して重い処分が下されると思われます。だからこそ誰も他のボートの部品交換をするなんて思いませんし、今回の事件にまさかと思わされました。

休んでる間に誰か自分の仕事をしてくれないかな、とは誰もが考えそうなことですが、ボートレース界では奇妙なかたちで実現してしまったようです。私も寝てる間に原稿が完成する可能性をあきらめないようにしたいと思います。

 

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岡井モノ

やとわれ編集長。だいたいわかってない。 twitter→@shopping_owl

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