やとわれ編集長 岡井のボート事件簿 FILE35 水中からの刺客事件

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やとわれ編集長 岡井のボート事件簿

【FILE35 水中からの刺客事件】

どうもみなさんごきげんよう、岡井です。ご存知のようにボートレース場は水場であり、そこには魚が泳いでいることもあります。今回は乱入者シリーズ(?)のひとつとして水中からの刺客をご紹介しましょう。

日本の海水浴場なんかでも、稀にイルカやアザラシが迷い込んだというニュースがあります。それならば海や川と繋がっているレース場にも進入してくるのでは、そんな風に考える人もいるかもしれません。しかしレース場は水門等で外海へ完全に開放されているわけではなく、水中から大型の生物が入ってくることはほとんど無いようです。各レース場の生態系が完全に把握されているわけではありませんが、見ている限りそこに生息する魚は小型のものが多く、レースに大きな影響を与えるものはないと思われています。

しかし小型の魚でも場合によっては影響があるのではないでしょうか。トビウオやダツのような水面から飛びあがる魚が選手を直撃するなんてこともあるかもしれません、特にダツは人体に突き刺さるケースもあるようなので大変危険です。

 

私は祈るような気持ちで調査をしました、愛するボートレーサーが魚類に襲われるなんて想像しただけで失神してしまいそうです。

 

──残念ながら該当のケースが見つかってしまいました。水中からの凶悪な刺客に襲われたのはよりにもよって女子レーサーだと判明。なんと卑劣な魚類でしょう、畜生許せねぇ!! こいつら人間じゃねぇ!!

 

■ピット騒然、水中からの襲撃

2019年8月7日 蒲郡競艇レディース 12R

第33回レディースチャンピオン。12Rはドリーム戦でもあり、出場選手はそうそうたるメンバー達。ピット離れをスムーズにおこなうこと、どのコースに入るかの駆け引き、ピット内でレース開始を待つ選手達からも緊張感が伝わります。

 

最終レース、日も暮れた時間帯の一瞬の静寂、その間隙を突くかのように光が水面から飛び出す。

光を伴った何者かはピット内のボートに、いや、ボートに乗り込んだ選手に向け弧を描く軌道であった。

驚く選手達。ある者は体をのけ反らせ、またある者はボートの上で立ち上がる。

しかしあまりに突然の出来事、さらに不安定な船の上、一流の反応速度を持つボートレーサーであってもそれをかわすことは不可能だった。

不運にもそれは3号艇の方向に進み、選手が気づいた時には既に手遅れ。

脇をかすめ、そのまま水中に沈んでいった。

 

……えっ、沈んでいった!? 

何かがピット内に飛び込んできた、多分魚。なんだかわからないけど、そのままいなくなった、多分そのまま水中に落ちていった、魚だと思う。うんきっと魚だよ。と状況がはっきりしないままピット内がざわつきます。

並んでボートに乗り込んだ選手達の注目をあつめながら、再びボートに座り直す3号艇選手。投げ込まれたように乱入してきたあれは一体なんだったのか。多分魚だけど。

 

■水中からの刺客、その正体

その後レースは何事もなく進行、件の3号艇選手も2着に入っています。乱入者が何者だったのかが話題になりましたが、おそらくボラであろうという話になっています。

▲刺身やから揚げ等で食用にされます

ボラというのは日本にも広く生息する魚で食用にもされています。水面を跳ねる性質があるようなのですが、前述のダツのような鋭さは無いのであまり危険な存在という印象も無いようです。今回の事件もおそらくは人を狙ったということではなく、たまたま水面を跳ねたところ、運悪くピット内に飛び込んでしまったということなのでしょう、まったく人騒がせな魚です。

 

善良な魚類を悪者扱いしてしまった私は反省し、その生態を正しく理解するためにボラについて調べることにしました。なになに、「跳びあがる理由は周囲の物の動きや音に驚いたり、水中の酸素欠乏やジャンプの衝撃で寄生虫を落とすためなど諸説あるが、まだ解明には至っていない」。なるほどまだ謎が多い生き物みたいですね。「人に衝突することも見られ、成魚の場合には時に釣り人やサーファーなどを負傷させたり、他にも競艇場でボートを操縦中の競艇選手を直撃し失神させた事例がある

いや、けっこうやべーヤツじゃねえか!!「失神させた事例がある」って前科持ちだよ!!

危険かと思って調べたら心配するほどでもないかと思わせてやっぱり危なかったボラ。私の心をかき乱すのはかまいませんが、どうかレースをかき乱さないよう祈っています。

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岡井モノ

やとわれ編集長。だいたいわかってない。 twitter→@shopping_owl

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