めおと舟 その45『第一回!チキチキ!全レースぶち込み対決! 中編』

連載
めおと舟

 

前回までのあらすじ──。
『ボートレースで一発ブチ当てて引っ越せばいいじゃない』という妻の言葉から唐突に始まった夫婦共通の趣味・ボートレース。順調にハマる夫婦だったが肝心の引っ越しに関しては夫の職業がボトルネックになり暗雲が垂れこめる。さらに本格的なコロナ禍が世界に到来する中で妻は転職。なんと1Kの自宅にて夫婦二人での在宅勤務が始まった。

【全レースぶち込み対決・2Rまでの結果】
夫……▲500円
妻……▲230円

只今の収支差は270円。まだ焦るタイミングではない。が、今回の勝負は収支が1円でも高い方が勝ちである。負けた方は米10キロを購入する義務が発生する。だいたい5,000円くらいだ。お小遣い制が導入されてるオイラにとっては洒落にならんくらいデカい。

「やっぱ1Rの返還が痛いなぁ……。あれ獲りたかった……」
「出鼻くじかれるとなんか調子下がるわよね。わかる」
「よし、じゃあ気を取り直して。次のレース見てみっかこれ」
「うん! みてみよう!」

【ボートレース若松ひめちゃん杯二日目3R】

「これはもう山地選手次第よなぁ……」
「わかりやすいレースではあるわね」
「マクリが成功するか、しないか……」
「よし、わたし決めた」
「早い! じゃあオイラも……。これでよし」
「せーの!」

【夫の予想】
1-5-46
5-1-246

【妻の予想】
5-2-1
1=25
3=5

「2連複ゥ……? ガミるっしょこれ」
「1=5きたらガミるわね。それ以外だったら多分大丈夫」
「マジで? 1=2とか怪しいと思うけども……」
「ううん。外側にド本命がいる時は1=2とか結構美味しいのよ。これ私よく最近よくやるの。だから正直スタ展見ても見なくても変わらないわね。5-2-1を複にするか単にするかで迷ったくらいで」
「ほんとだ。珍しいな。3連単買ってる」
「そう。珍しいでしょ。でも山地選手のマクリが成功するならこの形しか見えないのよね。そこはまあまあ自信あるから単にした。で、成功しなかった場合は2連複で回収──」
「んー。なるほどなぁ」
「ひろしなんで6入れてるの」
「俺も成功する場合としない場合に分けてるんだけども、5が先に回るときって、6がひっついて行く気がするんだよなぁ」
「それもあるけど、今回の場合は……。うーん。このレースは違うかなぁ……。今回の6号艇は機力が弱いわよね。あと単純に吉本選手ちょっと重いかなァ」
「いやー。もう買っちまったし。俺は吉本選手を応援するぜ。たのむぜマチャアキ!」
「マチャアキ……。あ、ホントだ。吉本選手、マサアキって名前なんだ……」

結果!

夫……的中なし
妻……1=2(1,280円)

「うわ、5号艇マクり切れず。てかなんだよあのワケ解んない進入順は!」
「ね! すごかったね。25613/4……。こんなんあるのね」
「でもはるちゃん複勝きっちり取ってるわ……。1=2。うわホントだ1,280円もついてる。マジかよ……」
「そこじゃないのよ今回。5-2-1。これ3連複にしとけばよかった」
「え、3連複のオッズ580円じゃん。えー! 2連複の方が高い」
「そう。5が入ってないから。絡むと途端にオッズ下がるのよ。だからこういう時は内側の2連複買っとくべきなのよね」
「うわー。すげー勉強になるわ……。ありがとう」
「いえいえ」

【収支】
夫……▲1,000円
妻……550円

「やべえ。差がついてきた」
「へへへ。ありがとうございます……お米ありがとうございます……」
「くっ! まだ負けたと決まったわけじゃねぇ! 次!」

【ボートレース若松ひめちゃん杯二日目4R】

「これは3号艇と5号艇がどう動くか……。さっきの作戦使える? 1=2高くなる説」
「いや、これは使えないわね。1人の選手に人気が集中してないと駄目」
「そりゃそうか……。ちょっとオイラ、いい加減当てないとやばいから慎重にやろう……。よし、決めた」
「わたしも。せーの!」
「ドン!」

【夫の予想】
1-2
3-1
3-2
5-1
5-2

【妻の予想】
1-5-3
2=5=6
1=2=3
2=3=5
3=5

「ひろし、なんで本命の3=5系外してるの」
「え、なんか変?」
「さっき、当てたいから慎重にやるとか言ってた気が……」
「フン。当てればいいんだよ当てれば。これ3-12とか普通に直撃しそうじゃない?」
「ンー。悪くはないけど……。まあ見てみましょうレース」
「よし。当がんばれ! プライドをかなぐり捨てて2連単に振ったんだからたのむぞ!」
「プライド持つほど当ててないわよねひろし……」

結果!

夫……的中なし
妻……3=5(500円)

【収支】
夫……▲1,500円
妻……550円

「ゲェ! 3=5!」
「ほらー。まあ500円だけどね。8番人気で5倍って、やっぱり広く買われてるわこのレース……」
「当てたのにあんまり喜んでない!?」
「フフン」
「なにその『こんなの獲って当然でしょ』みたいな鼻息!」
「ひろし今日当てたっけ?」
「まだいっこも当ててねぇよ!」

妻はハイボールをグビリと飲んで、そうしてオイラの肩に手をポンと置くや、なんだか同情的なため息を吐いた。

「まあ、がんばれ」
「ぐは! はらたつ! こなくそッ──!」

タバコ休憩をはさみつつ、次のレースに挑むオイラ。はるちゃんは金額差がついてきてちょっと余裕が出てきたのか、鼻歌まじりでスマホをいじっている。まだ全然。まだ2,000円程度の差だ。3連単一発でマクれる。いける。いける!

──と、思っていた時代がオイラにもありました。

【5Rの結果】
夫……的中なし
妻……的中なし

【6Rの結果】
夫……的中なし
妻……複勝3(300円)

【7Rの結果】
夫……的中なし
妻……単勝2(170円)

【8Rの結果】
夫……的中なし
妻……的中なし

【収支】
夫……▲3,500円
妻……▲980円

「うはぁ! 当たらねぇ! 全然カスリもしねぇ!」
「やばい、わたしも2レース外しちゃった。まあでもいいか、お米買ってもらえるし」
「痛すぎる! ちょっとマジで当てるぞそろそろ! つまんなすぎる!」
「そうね。流石に外しすぎよひろし。わざとやってる?」
「いやガチでやってるよガチで! ングォァ……!」

時刻は既に20時。残りはたったの3Rだ。的中は未だゼロ。いままで1Rから12Rまで全部買った経験はそもそもないんだけども、初体験でいきなり全ハズシはトラウマになりそうな気がする。プラス収支にもってくのが一番良いのだけど、もはやそんな贅沢も言ってられない。とりあえず当てたい。

そう考えると、残り3Rでやるべきなのはとりあえず当てる事。従って狙うべきは鉄板の買い目だ。そうなるとオッズが怖い。言わずもがな、「はるちゃんに勝つ」のが今回の目的である上、知らず知らずのうちにハマった奸計により5,000円相当のお米購入義務まで背負う羽目になる。これはプライドと金銭両面でダメージがデカい。

手堅く当てつつ、収支を出す。

オイラはそこで、最初に決めたルール表に目をつけた。

視線がある一点。ひとつの文言に止まる。

──そうか。その手があった。

「よし、オイラちょっと作戦変える」
「……どうするの?」
「教えない! はるちゃんは今は敵だ!」
「え、なにそれ! じゃあわたしも作戦変える!」
「なんで変えるし! 真似しないでいいよ!」
「フンス! へへ……。じゃあそのままでいこう……」
「おい、いつの間にか結構飲んでるな……!」
「へへ。ボートやってるとお酒進むねぇ……」

オイラが決めた作戦。それは……。

次週、第1回めおと舟全レースぶち込み対決、ついに決着!

 

著者プロフィール画像
あしの

浅草在住。猫とホラー映画とパチスロを愛する39歳。パチ7にて『インタビューウィズスロッター』連載中。『5スロで稼げるか?』(www.5suro.com/blog)の中の人。ボートレースはからっきし初学者ですが、自分自身で楽しみながらその面白さをお伝えしていきたいと思います。

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