めおと舟 その61『仕事してるもん!』

連載
めおと舟

前回までのあらすじ──。
妻の言葉から唐突に始まった夫婦共通の趣味・ボートレース。当初の目的である引っ越しを終え、次なる目標は『楽しみながら勝つ事』。夫婦合算で年間収支プラス30万円を目指し始めた。タイムリミットは年末。果たして結果は……?

最近体調が悪い。何のせいかというと完全に酒のせいなのだけども、いよいよツメが黄色くなってきたので多分肝臓がイカれはじめてるんだと思われる。というわけで我が家で定期的になされる「減酒」がまた宣言されたわけだけども、最近はこれがまあまあ続いており飲酒のペースはかなり落ちてきてる。だいたい3日のうち2日飲む感じ。定期的に休肝日を設けるだけで違うというけども、まあそんなに変わらん。体調悪し。

夏の終りのとある日もそんな感じでえうえう言いながら仕事をしてたのだけども、物書きといふものはおおざっぱにいうとデスクワークであるゆえ、二日酔いとかでフラフラだとマジで何も出来ない(どんな仕事でもそうだっつの)。座ってるだけでも気持ち悪いしこりゃもう横になってゲームするしかないワイみたいな感じでベッドにコテンと転がってスマホをいじっておると、テレワーク中のはるちゃんからこんな言葉が飛び出した。

「ひろし、最近全然仕事してなくない?」
「なッ……!?」

コロナの影響はそれぞれいろんな業界に及んでおるのだけども、いわゆるライター業の場合は「ライターだから」というよりも「何のライターか」が重要でして、どこに紐付いた仕事をしておるかによってコロナの影響が全然違うらしい。そういう意味ではオイラがいる業界の仕事のお仕事は大局的に見て「ちょっと減った」というのが正解だと思う。ただ、もっとガッツリ影響を受けてる人がいっぱいいる中でオイラ個人としてはマシな感じというか。そもそも普段から書いてる内容があんまし速報性が要らんものが多いんで、知らんうちにリスクヘッジが出来ていたらしい。なので収入はずっと横ばい。大きく減ってもいないし、当然増えてもいない。

「いやー、仕事してるぜ結構」
「ンー。ハタからみてると、全然してないわよひろし」
「えー、そう?」
「うん」

スマホから目を離してちょっと考える。今週を振り返ってみよう。月曜日。これは記事を書いた。火曜日。ンー。なんもやってない。水曜日。寝てた。木曜日。たしか寝てた。金曜は間違いない。寝てた。

「あ、オイラ今週全然働いてない!」
「でしょう? 働きなさい!」

でもさー、二日酔いがさーとか言いながらベッドでゴネるオイラ。はるちゃんが冷たい視線を寄越してきた。不甲斐ない夫に対して、我が妻はるちゃんはテレワーク中も適度にサボりつつ概ねしっかりに働いておる。4月に転職してそもそもの給料が上がってるのもあるけども「自宅で仕事」というのは通勤・退勤の時間を生活上の計算に入れなくて良いので、これが何を意味するかというと「すげー残業する」ようになるらしく、彼女が所属する会社がそういうのにおおらかというのもあって日によっては1日12時間労働とかふざけた事になっており、収入面ではガツンと上がったようだ。

そう、我が家は今、収入の逆転現象が起きてる。実際に嫁の給与と自分の原稿料を比べたわけじゃないけども、オイラの肌感覚的には間違いなく抜かれてる。残業リミットブレイクは流石に必殺技過ぎる。覇王翔吼拳くらいある。

「さて、わたしも休憩……! ちょっとベッド空けて!」
「ウイ……」
「さー、ピノコおいでェ……! 草食べようか? ん? にゃんちこサラダさん食べようかァ? へへ。あーピノコは癒やされる……!」

ベッドを占領され、仕方なく仕事部屋に移動するオイラ。じゃあもう仕事するしかねぇなぁという絶望的な気分で椅子に座る。流石にもう夕刻に近づいてきてる時間なので実際の所二日酔いもかなり治まってる。やろうと思えば物書きも出来なくはない。とりあえずテキストエディタを立ち上げてちょっと書いちゃ消し。書いちゃ消し。Twitterを眺めたりWEB上のブックマークを巡回したり。駄目だ全然気分がノらん。

「えへへ。ピノコ可愛いねぇ。マッサージしようか。マッサージしようかぁーピノコォ。ハイ、モミモミモミ。にゃんちこ肩甲骨ちっちゃいねぇ! にゃんちこ肩甲骨ちっちゃいねぇ……!」

ベッドの上で正座するはるちゃん。その太ももの上ではタロイモみたいな形になって爆睡しつつ背中を揉まれるピノコがいた。幸せな光景だ。労働中の休憩。丸一日休憩中みたいなオイラには少々眩しい充足感があった。

ふと気づいたらボートレースの番組表を見てた。G1、宮島チャンピオンカップ開設66周年記念競争。初日の最終レース──つまりはドリーム戦だ。

つい先日のボートレースメモリアルから中一週間。ということは峰選手の出場レースはこれで2節連続でチェックしてる事になる。というかこのメンツは全員メモリアル出場選手なので連続観戦だ。

「お……。寺田選手だ」

前回のボートレースメモリアルで優勝をキメた寺田選手。さらには2着の菊池選手、3着の新田選手までもがいる。なんだかソワソワした。ベッドの方をちらっと見る。猫に夢中のはるちゃんにバレないようにこっそりテレボートにアクセス。そのまま1,000円だけ入金して番組表に見入る。

実力者揃いのドリーム戦だけど、1着は峰選手でいいだろう。ボートレースメモリアルでは4カドの峰選手に煮え湯を飲まされた格好になったけども流石に1号艇の峰選手を外す意味は無いと思う。ここは確定だ。……続いて2着にくる選手だけども、怪しいのが3号艇寺田選手。キャブレターとギアの交換がある上に当地勝率がちょい低めなのが気になる所ではあるけども、やっぱメモリアル決勝の素晴らしいレースを見ると心情的に外せないし外したくない。あとイン逃げの展開になるなら普通に猪木(1-2-3)も警戒しとくべきだろうし、1-3-2あたりも考えといた方がいい。

他に3連に絡んできそうなのは4号艇菊池選手。これは単純に平均STが頭一つ抜けてる選手が4カドにいるとどうしても無視できないからだ。だけど、Fもちなのが判断に迷う所。ただドリーム戦は流石に握っていくと思うんでここが一番のスタートを切れるかどうか。ただ切ったとしてもこのイン勢のスキを付くのってかなり大変だと思う。あと5号艇篠崎選手は単純に機力がいい。1着は無いにしても峰選手の逃げの展開になるならバックストレッチの伸びで3連には絡んでくるかもしれない。

よし、決めた。

【夫の予想】
1=2=3 500円
1=3=5 500円

峰選手と寺田選手を固定で猪木の展開をおさえつつ、篠崎選手のモーターに期待。G1ドリーム戦なので3連複でもそれなりにオッズが付くハズ。

ファンファーレ。6号艇が波に押されるようにしてピットを離れる。進入は枠なり3対3。大時計の針が0時を回り、各々限界のスピードで見えないスタートラインを横切る。僅かに先頭は4号艇菊池選手。やはりスタート巧者! しかもターンマークではインコース3艇が大きく膨らむ。絶好の差しチャンス。いかんこのままでは4号艇で決まってしまう……! とその瞬間、イン勢が残した3本の引波に足を取られ大きく減速する。差し届かず! さらに外側では僅かに先行する1号艇と2号艇の間を縫うようにまくり刺しを狙う3号艇寺田選手。上手い! 引波にハマった2号艇は大きく順位を落としてターン後の隊形は1-3-4。5号艇篠崎選手は現在4番手。ここまではほぼ予想通りだ。2周目第1ターンマーク前では4号艇と5号艇が激しく競り合う。こうなると5号艇の機力が心強い!

──よし、貰った!

まだ競り合いの最中だけども確信してつぶやく。そしてそのつぶやき通り、2週目バックでは5号艇が3着に浮上。そのまま1800mを走りきって1-3-5でフィニッシュだった。

3連複のオッズは6番人気で990円。500円入れてたので4,950円のバックだ。金額はショボいけども、それよりほぼ正確にレース展開を読めたのが嬉しかった。

「はいピノコ、草食べる? また食べるの? 草好きねぇ! はいハムハムハム。ハムハムすんのー? ピノちゃんハムハムすんのー? あらコテンしたねぇ! ヘソ天にゃんちこねぇ!」

ひたすら猫と遊ぶはるちゃん。その様子を見ながらフッと笑うオイラ。その表示にはひと仕事終えた男のアンニュイがあった。やれやれと鼻で息を吸って、それからオイラはこう言った。

「はるちゃん、松屋にいこう……オゴるぜ?」

 

【今回の収支(9/1~9/13)】

収支 2050円
購入舟券数 4R
的中舟券数 2R
今回の的中率 50%
今回の回収率 137%

【今までの累計成績】

収支 -16,850円
購入舟券数 50R
的中舟券数 16R
今までの購入金額 54,200円
今までの回収金額 37,350円
今までの的中率 32%
今までの回収率 68.8%

目標金額まで……316,850円(夫のみの暫定)

(挿絵:武尊)

著者プロフィール画像
あしの

浅草在住。猫とホラー映画とパチスロを愛する39歳。パチ7にて『インタビューウィズスロッター』連載中。『5スロで稼げるか?』(www.5suro.com/blog)の中の人。ボートレースはからっきし初学者ですが、自分自身で楽しみながらその面白さをお伝えしていきたいと思います。

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