めおと舟 その68『悪戦苦闘! 女子レースが難しい件』

連載
めおと舟

前回までのあらすじ──。
妻の言葉から唐突に始まった夫婦共通の趣味・ボートレース。当初の目的である引っ越しを終え、次なる目標は『楽しみながら勝つ事』。夫婦合算で年間収支プラス30万円を目指し始めた。タイムリミットは年末。果たして結果は……?

ボートレースの特徴のひとつに、「女子選手が多い」というのがあるそうな。調べてみたところ競馬のほうでは中央・地方を併せても女性騎手は11名、オートレースでは13名しかおらず、競輪に至っては女子と男子ではそもそもルールが違い「ガールズケイリン」は独立した競技になってるとの事。

それらに対しボートレースでは2020年現在登録選手の1割強、なんと約220名もの女子選手がいる。斡旋レースなどの観点で考えると男子と完全に平等とは言えないまでも、笹川賞(人気投票で出場選手が決まる)などSGレース出場経験のある選手も徐々に増え、今年でいうと平山智加選手なんかは11月時点での獲得賞金総額が全体の50位台につけていたりと、控えめに見たとて各種公営競技の中では比較的「性差が小さい」競技と言える。

つまり、ボートをやる上では「女子選手」の存在は決して無視できないわけでして。これが意外に、予想をする上で難物だったりするのです。

たとえば我妻、はるちゃんの場合。

「うーん……。これも……。これもかァ。難しいなぁ」
「……どうした」
「あのね、ボートやろうと思うんだけどね」
「うん」
「今日、簡単なレースがないのよ」
「どれ……」

番組表を一瞥する。うちのはるちゃんはルーキーシリーズと一般レースを好んでおり、グレード付きのレースを忌避する傾向がある。それに関しては実はオイラも同じなのだけども、彼女の場合はもうひとつ、なるべく触らないようにしてるレースがあるのだった。

「ああ、なるほど。男女混成のレースが多いのね」
「うん。多摩川も浜名湖も住之江も尼崎も若松も。全部混成なのよね……」
「常滑買えばいいじゃん?」
「常滑はG1だし……。うーん」
「この機会に女子レーサーに挑戦してみれば?」
「いやぁ、難しいのよ女子……。わたしたぶん女子レースの勝率1割くらいしかないと思う」
「ンー。まあ確かに。難しくはあるよねぇ」

オイラの中での女子選手オンリーのレースのイメージは「めちゃ荒れる」だ。混成レースの場合はそうでもないけども、女子オンリーのレースはそもそもあんまり予想した経験がないのでちょっと難しい。

「とはいえなぁ。ボートをやる上では女子選手の存在は絶対に無視できないし。そろそろお互い、苦手意識の克服に着手したほうが良い気がする」
「うん……。まあそうなんだけどねぇ……」
「よし、決めた。オイラは本日女子レースをメインで勝負してみようと思います」
「……お。ホントに?」
「うん。やってみる。今日は混成レースばっかだし。思い立ったが吉日! はるちゃんは?」
「うーん……。分かった。じゃあ、わたしもやってみようかな……」
「よし決まり。じゃあまずは……」

【11/4 多摩川 オールレディースリップルカップ5R】

オールレディース。しかもG3だ。はるちゃんにとっては二重の意味で苦手なレースだけども、オイラも大差ない。

「そう。こういうのがダメなのよわたし。B2選手が2人。荒れるよう」
「あー、これ確かにグレード付きでこれはなかなか見ないねぇ」
「だめだ、全然分からない……。ちょっと調べよう……。あ、米井選手って産休明けなんだって……」
「ああ、産休とかあんだなぁ女子レーサー……」
「そうなのよ。でも米井選手、データ見る限りスタートは良いから、絶対無視できないのよね……。でもブランクあるだろうし、勝負カンとかも戻ってるかどうか判断ができないし。なんか米井選手を1枠に持ってきてる番組マンの編成が憎たらしい!」
「んー。言われてみれば難しいなこれ……。んじゃまあ、オイラはセオリー通りB2選手は外すわ。高田選手、山川選手、向井選手で。どうせこれ進入は5が外に行くでしょ? 実質5艇建てになるから……。4カドの山川選手を軸に行こうか」
「米井選手外す?」
「うん。外す」
「なるほど……。よし、じゃあ決めた!」
「せーの!」

【夫の予想】
246(ボックス) 6点 100円

【妻の予想】
1-4=6 2点 100円
2-1=4 2点 100円
2-4=6 2点 100円

「え、ボックス? ひろしがボックス買ってるの初めてみた」
「初めて買ったモン。どうせ挑戦するなら初めての買い方したった」
「わたしは米井選手を信じてみた」
「結構絡めたねぇ……!」
「うん。母は強しよ! 頑張れ米井選手!」
「よし、レース見てみよう……!」

結果!

「米井選手6着やんけぇ……! まあブランクあるからしゃあないけど」
「ぐはー! 2着の犬童選手、わたしもひろしもノーマーク」
「でもこれ、2-3-4って一番人気ぞ。えー……。そりゃそうよなとも思うし、うそんとも思うし。難しいなこれ……」
「気を取り直して次いきましょう……」
「つぎ混成でいい?」
「うん。当てましょう」

【11/4 徳山 住信SBIネット銀行賞8R】

「これは修行になりそうなレース!」
「直前情報では5号艇福山選手が大外にいってるわね。実質5艇建てのレース。うわ、小野選手体重軽い!」
「軽い場合ってウェイト乗せるんだよな。ええと、47キロが規定だから、今回は1.5キロ乗せるのか」
「それでも3号艇の西川選手と比べたら10キロくらい違うから、これはやっぱり全然変わってくると思う」
「なるほど、女子の武器はウェイト……。そう考えると小野選手は三連絡みそうな気がするなぁ……」
「よし、わたし決めた」
「オイラも」
「せーの!」

【夫の予想】
2=4=6(3連複) 1点 100円
2-4=6 2点 100円
4-6-2 1点 100円

【妻の予想】
1=6(2連単) 2点 100円
4=6(2連単) 2点 100円

「奇しくも400円ずつの勝負か……」
「わたし絶対当てたいから2連単で」
「オイラ謎に3連複買ったった」
「なんでまた……」
「テレボートの履歴で連複の勝率がヒドくてさ。ちょっと上げたいなと」
「また下がるわよ……?」
「不吉な……」
「さあ、レース始まるぜ。見てみよう」

ピットアウト。直前情報通り進入隊形は123/465。5枠につけた6号艇小野選手の動きに注目しながら迎えたスタート時刻、好スタートを切ったのは4号艇出畑選手だった。頭一つ抜き出た形のまま3号艇の頭を押え、そのまましっかりとマクり切る。注目の小野選手は外から大胆にRを取りつつ大きく迂回するにようにターンを回った。

「あらー、膨らんだ!」
「いや、でも速いよ!」
「え……? あ、マジだ。2着につけた!」
「やっぱ体重ってスゴイね! 誰よりも膨らんだのにスピード戻すの一番早かった」
「4-6か……? 4-6だよね。2も来てる。あ、取ったかこれ」
「うん! これ二人共とってる」
「おお、珍しい。よかった!」
「イエーイ! 的中!」
「二人共とるの久々じゃない?」
「ね! へへへ」

【夫の結果】
2=4=6 1点 350円
4-6-2 1点 3,770円

【妻の結果】
4-6 1点 2,050円

「よし、女子選手絡みでしっかりゲットしたね」
「2連単もオッズ結構ついた!」
「あ、ホントだ。20倍行ってる……!」
「もうちょっと買っとけばよかった! へへ」

その後、調子に乗った我々は徳山と多摩川を交互に買い続けたのだが、二人して7R連続で外すというなんともイヤンな状況に。

「……ンガー! 全然当たらねぇ!」
「ひろし、酷いわね! 2着まで全部的中してるのに3着で全部外してる!」
「そういうはるちゃんもなかなか酷いな! カスッてもいない!」
「あー、もうマイナスなったわたし」
「オイラも。さっき勝った分なくなった……」
「ちょっと、次最後にしよ……」
「どれにする?」
「まー、当初の予定通りレディース買おうぜ」
「リップル? 自身ないなぁ……」
「混成でもいいぜ?」
「あー、じゃあ住之江はどう?」
「……これか」

【11/4 住之江 デイリースポーツ杯争奪 2020サザンカップ5R】

「女子レーサーは4カドの……タカ……なんて読むんだこれ」
「タカハタ選手だって」
「珍しい名字だなぁ……! 今年20歳。5000番台の選手だねぇ」
「位置と機力はいいんだけども、1着は厳しいかなぁ」
「1着はインの原田選手だろうなぁ……。というかタカハタ選手、平均スタートがちょっと遅れ気味だから、外側の深水選手とか動きやすそうな気がするぞこれ」
「ンー。1-3-6とか1-3-2とか……。4が絡むなら6号艇が先に行ってからかなぁ」
「1-6-4とかかな」
「スタートがビシっと決まったら1-4-6とか、1-4-3とか……。どうだろ。4を軸に考えると難しいわね……」
「ンー。よし、オイラ決めた」
「わたしも……これでいいかな」
「せーの!」

【夫の予想】
1-346-346 6点 100円

【妻の予想】
1=4(2連単) 2点 500円

「はるちゃん勝負かけたなぁ……」
「ひろしそれ、ガミらない?」
「1-3-6とか来ると危ないかもね。多分1番人気。タカハタ選手が絡めばどれもプラスになるかな」
「1-4-6とかだと結構付きそうねぇ」
「頼むぜぇタカハタ選手。元サッカー少女らしいぞ。よし、オフサイド決めてやれ!」
「ひろし、オフサイドの意味知らないでしょ……?」

定刻通りに流れるファンファーレ。進入は123/456だ。まず好スタートを切ったのは5号艇倉田選手。とはいえその差は僅かでマクりに構えるほどではなく、枠なり1号艇2号艇がすんなりとターンマークを回る。どん詰まりの前方を差しに構えるのは我らが4号艇タカハタ選手。あら、流れるかこれは……!

「おっと、接触!」

5号艇倉田選手がタカハタ選手の後ろから軽く追突する形でバックストレッチに突入。これで5号艇は後方へおち、逆に4号艇は流れそうな船体を立て直すことに成功。トップスビードで三番手を爆航する事になった。

「タカハタ選手、三連絡んだ! 結構つくぞこれ!」
「ひろし、2号艇買ってる?」
「あ……買ってねぇ!」
「うわ、もったいない。なんで3にしてるの!」
「たしかに! なんで2号艇はずしてるんだオイラ……!」
「バカバカ! この下手くそちゃん……!」

「うわ、痛すぎる。40倍オーバー」
「ねぇなんで2買わなかったの……!」
「ぐはー中途半端じゃった……。どうせなら2も行っとくべきだった……」
「もー、せっかくのタカハタ選手の頑張りが……」
「いやー、ホントだぜ……」
「まあわたしもハズしてるけどね。へへ。すいません、すいません」

さて。一日ガッツリ女子レース見て気づいた事。女子は体重が軽い。ゆえにスタート巧者の女子レーサーが4カドに居たりすると普通に強い。あと女子オンリーのレースの場合、なんかB2選手が普通に2人とかいたりする。んでそれは事故とかじゃなくて、女子特有の、例えば産休なんかの影響があったりするんで、男子レースの時にオイラが鉄の掟としている「B2選手は3連に絡まない」というジンクスがバンバン覆る。

ちなみに本日男女混成のレースを5戦ほどやったけど、4/5で女子選手が3連に絡んでたんで、これはもう女子が不利とか色々考えずに、むしろ女子であることを「体重が軽くて直線で伸びる特性」として考えたほうが良さそうな気がする。

「どうだった、今日一日女子レースやってみて」
「まあ、マイナスだったけども、なかなか面白かった!」

お互い、苦手意識はまだ残ってるけども、それは単純に男子レーサーばっかみてたんで「女子レーサーを知らないから」にほかならぬ。今後名前と特徴を覚えていけば、この苦手意識も徐々に無くなっていくだろうて。

以上。本日はここまで! また来週ゥ。

(挿絵:武尊)

著者プロフィール画像
あしの

浅草在住。猫とホラー映画とパチスロを愛する39歳。パチ7にて『インタビューウィズスロッター』連載中。『5スロで稼げるか?』(www.5suro.com/blog)の中の人。ボートレースはからっきし初学者ですが、自分自身で楽しみながらその面白さをお伝えしていきたいと思います。

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