めおと舟 その93『株とボート』

連載
めおと舟

前回までのあらすじ──。
夫婦揃っての趣味を持とうと始めたボートレース。2019年、2020年と連続でトータル収支マイナスを叩いた夫婦が次に目指すのは「2021年の収支をプラスにする事」。今年こそはと胸に誓いつつも、コロナ禍で巣ごもり状態の二人は他にやることもないまま、代わり映えの無い日常を送るのだった。

蝉の声とサイダーの匂い。子供の頃、真っ白な日差しを浴びながら縁側でアイスをたべつつ、どっか遠くで聞こえるプラスチックバットの打球音を聴きながら、夏休みなげーな、と思っていた。

家庭環境がイカれてて、東京と長崎をいったりきたりしていた時期である。

幼馴染もいないし親父も婆ちゃんも仕事で朝からいないので、幼稚園のある年の夏休みは、それはそれは暇だった。今なら一ヶ月くらい余裕のヨの字で遊び倒して過ごせるのだけども、当時はスマホもなければ年齢的にパチスロにも行けない。第一、家の周囲に何があるかもよく分かってなかったので、基本的に家でボーッとしながらテレビをみたりアイス食ったりするしかなかった。

おいおい、人生って長すぎやしないか。

と、ある時思った。この、永遠に感じる暇な時間を何十倍にもした時間をかけてようやく大人になって、それからそれよりもずっと長い時間を過ごして死んでいく。つまり自分にとって大人になるのも遥かに先だし、老いるのは悠久の彼方。死なんてもはや、御伽の世界の話である。

陽の光を浴びて溶け出すアイスをなめつつ、これから来るあまりに長い人生について、果たしてどう暇を潰せば良いのか、その途方もなさに明け暮れたものである。

約35年後。

気づけばもう、オイラにも老いが迫りつつある時期である。なんだかんだ楽しく暮らしてきたけど、光陰はまさしく矢の如く、あっという間に眉間に迫っては加速して、ひゅんと背中側に抜けていった次第。人生はむしろ、短すぎる。なんせここへきて我が家にはとある問題が持ち上がっておるのだから。

老後資金、2000万円問題である。

四年前に結婚したと思ったらもう蓄えの話だもの。極めて普通のことではあるのだけども、半分根無し草みたいな生活をしていたオイラにとっては、これはちょいと衝撃であった。なんせオイラはずっと「老後はずっと先の話」だと思っていたし、それ以前に「多分そのうち死ぬ」から、蓄えなんぞしておくだけ無駄だと思っていた。金は入ってきた瞬間に全部使ってこそ美しいし有意義である。銀行に預けた金は、それはもう金ではなくて帳面上の数字に過ぎぬ。そういう数字は当面の生活費があればよし。必要以上に数字の桁をあげる必要なんぞ、手前の葬式が豪華になる以上の意味なんぞありはしない。

と、アウトローぶって爪楊枝を咥えていたら、まあまあ速攻で老後を考えるべきシーズンになったわけで。流石にもう幼き頃に感じた「老後は悠久の彼方にある予感」が全くの間違いであった事を認めねならない。

このまま襟を正さねば、浅草寺の周りのアーケードで日がな一日座ってハトに餌やりながらダンボールで寝ることになる。そして重要なことに、オイラには妻がいる。今は二馬力なのでいいけど、なんかあったらおんぶして人生を駆け抜けねばならぬわけで、もうこの爪楊枝はペッと吐き出して真面目に考えねば。

というわけで。

このところ我が家には空前の投資ブームがきておる。ただ貯金するのも面白くねぇからせめてギャンブル要素を入れようみたいな感じもあるのだけども、それよか周りの人々がこぞって株やら投資信託やらを始めてるんで、もう乗るっきゃねぇこのビッグウェーブにみたいな感じだ。よっしゃレッツ投資。

問題は何の投資をするか、だけど妻と一ヶ月ほど話し合った結果、まずはお互い自由にやってみることにした。つまり、別々の元金で別々の投資方法を試してみるというわけだ。はいドン!

【夫(あしの)の投資】
国内株式(NISA)

【妻(はるちゃん)の投資】
投資信託(つみたてNISA)

これである。

NISAというのは非課税口座の事で、これは一定金額まで税制的に優遇されますよ的な制度を利用した投資の事。このお陰で最近個人投資家が激増してるらしい。んで「投資信託」というのも聞き覚えがあんまない単語だけど、要するに投資銘柄を自分で選ぶのではなくプロに丸投げする感じの投資方法だ。具体的に言うと「投資ファンド」というところ(あるいは人)に資金を預け、相手方はそれを元金にプロの目で投資先を選ぶ。利益が出たら手数料を取って各投資家に還元するぞいと、そんな感じ。個別の銘柄を自分で選ぶことが出来ない代わりに最大限のリスクヘッジがなされるので大損はそんなに無いかもね、みたいな感じとの事。

貯蓄するぞ! という出だしからこういうことを言うのもアレだけどオイラは「安定」とかそういうのに胡散臭さを感じるタイプの男だし「積立」という単語がなんかキライなので、普通に株式にした。

で、口座作ったりなんやかんや準備することしばし。

「よし、これで投資できるらしいぜ……」
「お。もう出来た? わたしの方まだちょっとかかるみたい……」
「じゃあ、先にやっといていい?」
「もちろん。わたし積立だし」
「じゃあ、ちょっと取引の練習がてら5万くらいで何か買ってみるか……」

はるか昔に遊び半分で「アビリット」の株を買った時は1000株が1単位だった気がするけど、どうやら今は全ての株が100株単位の取引になっているらしい。確かにこれなら低資金から買えるんで個人投資家も入りやすい気がする。

つまり5万円で買える範囲ということは1株500円まで。いや、100株買ったってしょうがねぇからもうちょい安いやつにしよう……。と、目についたのが「メディネット」という会社の株だ。おっかなびっくり注文を入れてたらすぐ約定した。取得金額は57円。800株取得である。

「おー。買えた。なるほどね……。スマホで買えるとは。恐ろしい時代になったな」
「それ、何の会社なの?」
「何か製薬会社みたいよ。しらんけど」
「持っとくの?」
「いや、練習で買っただけだからちょっとしたらすぐ売る」

と、どうせ激安株なんでこれ以上クソ下がる事もないだろうとたかを括ってたのもあり、別に急いでもないんで手元に置いて夜をまたいだのだが。翌日、午前中に起きてアプリを確認したところ、何でか知らんが上がっておった。

「お。上がっとるやんけ。売ろう……。どうやって売るんだこれ」
「ひろし起きた? おはよう」
「うん。何か昨日の株が上がってるみたい。売り注文出してみる」

何となく売り注文を出したところ69円で取引が成立した。買ったのが57円。売りが69円だから12円の利益である。パチスロでいうとメダル1枚にも満たない。まあたかだか5万程度の取引なんだからそんなもんか。と。よく考えたらそれが800株あるわけで。

「うお……1万円くらい利益でた……!」
「マジで……!?」
「何だこれ……。何もやってねーぞオイラ……」

何かの間違いじゃないかと何度も確認するが、何度確認してもホントにその通りらしく。まあ金額はショボいのだけど、数字をちょびっと入力してタップするだけで利益(しかもNISAなんで非課税)が出るというのがなんとも衝撃だった。

「おいこれ、やべーな人類」
「ね! びっくりした!」
「うし、もうちょっと金入れて低位株にぶっこむか……!」
「だめよひろし! 冷静になって! 貯蓄よ!」

と、そんなうまい話がそうそうあるはずもなく。株を始めてから大幅なプラスが出たのは初回こっきりであった。ビギナーズラックまるだしである。それ以降は買う株買う株ほぼ値動きがなく、あんまり貯金と変わらない感じになっておる。まあ朝イチにちょろっと相場見てるだけで大きな波を見逃しちゃった事が何回かあるんだけども。それから2ヶ月が経った。

さて。

株に手を出した事により、これにてオイラが嗜むギャンブル(もうギャンブルって言っちゃう)は3つになった。

・パチンコパチスロ
・ボートレース
・株

である。んで今年の収支でいうと……。

・パチスロ……プラス40万ほど
・ボートレース……マイナス6万ほど
・株……ほぼ横ばい

みたいな感じになってる。

で、これ結構「控除率」に準じてる気がするのね。パチスロの控除率は「機械割」と置き換える事もできるけど、オイラはパチスロメインなので現行機種の場合はこれが概ね97~110%くらいになる。交換率を加味するともっと下がるけど、貯玉利用や即やめなんかである程度はカバーできるし、設定に関してもオイラの立ち回りは買物や散歩のついでに家から徒歩3分のホールを覗いて、期待値ありそうなのがあったら回して即流す……みたいな感じなので、そんなに関係ない。また、連載でパチンコを打つこともあるけどそれは仕事なんで除外。そっちは負けてる。

めっちゃ連続して行く時期もあるけど、そんなでも無い時もある。今年は2月くらいは全然行ってなかったけど、それ以外はそれなりに行ってる。1月に大きく収支が出たのと4月の中盤で一気に勝った事でそこそこプラスがついてる感じだ。

で、ボートに関しては「控除率」がだいたい25%との事。これはよく言われる事だけども、理論上は完全ランダムに買ってくと回収率75%くらいに落ち着くハズ。

んで最近は毎回出してるけどオイラの今年の収支はというと……。

【今回の収支(1/1~4/27)】
購入金額 165,500円
払戻金額 102.810円
収支 -62,690円
購入舟券数 153R
的中舟券数 39R
今期的中率 28% → 26%
今期回収率 67% → 62%

怒涛の2週連続当たりナシを食らって現在62%。さすがにショッペェ! でも控除率から考えるとわりと普通な感じかもしれん。

ボートで収支を出すのには「的中率を上げる」か「オッズを取っていく」かの2種類と、その両方をとる場合の合計3つの戦略があると思う。先月、的中率が35%だったのに回収率が83%で終わった事で、今月は真逆に「オッズ狙い」で行ってるのだけども、結果として4月の成績はボロボロである。現在的中率8%、回収がなんと18%。

「狙って高オッズを取る」というのがどんだけ難しいか改めて実感した次第。でもまあ、一発当てれば全然プラスになるので、これでもやっぱずっとやってくと控除率75%くらいにはなる気がする。

さて、株について。

株の控除率ってじゃあどうなん? というと、これは当たり前だけど無い。手数料があるのでそれを控除率に入れるとしても、全体の取引額から考えるとションベンみたいなもんなんであんま気にしなくていいと思う(極論)。もちろんリターンを狙ったリスキーな投資(というか投機?)も出来るんだけども、我々みたく基本的には貯蓄目的でやる分には、まあ確かにそんなにギャンブリックでもねえなぁというのが現在の感想。これはボートレースで「超ガチガチのレースの単勝にひたすら100円賭け続ける」のに近い。

そしてボートだったらそれだとまず負ける。

すなわち、これを通して「ボートレースが如何にムズいか」というのがすげえ良く分かった。ボートやっぱ、オッズゲームゆえ、オッズが大事。ただ当てるのでなく、オッズを制する必要がある。最近「的中率よりもオッズを!」の標語で戦ってボロボロになってるけども、まだこれはしばらく続けてみようと思う。

とにかくデカイの当てて、収支を……!

(挿絵:武尊)

著者プロフィール画像
あしの

浅草在住。猫とホラー映画とパチスロを愛する39歳。パチ7にて『インタビューウィズスロッター』連載中。『5スロで稼げるか?』(www.5suro.com/blog)の中の人。ボートレースはからっきし初学者ですが、自分自身で楽しみながらその面白さをお伝えしていきたいと思います。

人気記事

荒れるレースの条件とは。 3カド戦に企画レース?

ボートのデザインについてまとめてみたら色々と面白かった件。

年間収支大公開! 今年の振り返りと来年の抱負を。

やとわれ編集長 岡井のボート事件簿 FILE11 厳格養成所脱走事件

ナカキン流展示航走の見方を紹介します。

SGにまつわる選手の話