めおと舟 その109『サブクエスト:ムサシを当てろ その2』

連載
めおと舟

前回までのあらすじ──。
夫婦揃っての趣味を持とうと始めたボートレース。2019年、2020年と連続でトータル収支マイナスを叩いた夫婦が次に目指すのは「2021年の収支をプラスにする事」。今年こそはと胸に誓いつつも、コロナ禍で巣ごもり状態の二人は他にやることもないまま、代わり映えの無い日常を送るのだった。

さて今回は久々の「まる一日同じ場の舟券を買ってみるチャレンジ」だ。

内容は例によってどっか場を決めて全部のレースを買うぜ! というのにプラスして前回発生したサブクエスト──ハーマンミラーの椅子を買うために6-3-4(ムサシ)を買い続けるぜ! みたいな感じなのじゃが、今回はちょっと不測の事態が起きてしまいまして、まずはちょっとだけ時間を巻き戻しましょう。

ギュルルルン!(巻き戻し)

「……というわけで、はるちゃん。ひさびさに二人で一日のレース全部買わない?」
「え、なんかそんな事になってるの?」
「うん。ちょっと読んでコレ──」

前回のめおと舟の原稿を読ます。

めおと舟はオイラとはるちゃんが二人でなんやかんややってる連載だが、基本的にネタを決めて書くのは筆者であるオイラだ。はるちゃんはオイラが書いたやつに関して笑ってるだけで基本的にはニコニコしながら「面白かった」というだけである。ただ、あまりにも実態とかけ離れたり、あるいは都合が悪すぎるものがあると「書き直しなさい!」とちゃんと言う。その辺はライターの嫁だから我慢、みたいな変な忖度はせずちゃんと言う。ウソは嫌いなのだ。

例えば最近なら引っ越し関連のネタの時にそれがあったし、書き直しもした。他の連載ではるちゃんが登場するコラムもそうだ。

ただまあ、結構ギリギリでの申し出だったので今回に関しては果たしてどうなのかは出たとこ勝負みたいな感じはあった。そんな尖ったとこもない普通の話なので余裕をぶちかましておったが、ただ「全レースうんぬん」に関しては一言もいっとらんゆえ、そこにカチンとくる可能性も無きにしもあらず……。だのでもしかしたら「勝手に変な企画を決めて!」みたいな感じでがらるる(薩摩の言葉で「怒られる」)可能性もなきにしもあらずだなぁと思ってたのだけど──。

「あー……なるほどね」
「これ、大丈夫……?」
「うーん……」

ゴクリ、と喉が鳴る。

「まあ、いいんじゃない?」
「……いっしょに全レース買ってくれる?」
「うん。午後のレースでしょ? 休憩中に予想して4レース目くらいまで買って。仕事が終わってからナイターを変えばまあ……。わたしは6-3-4買わないからね?」
「もちろん! もちろんさ! 6-3-4はオイラだけ買うよ! はるちゃんはもう、自由に──ド鉄板でいいからさ。付き合ってくれる?」
「そのくらいなら全然……。わたしも最近めおと舟の方で買ってないし、じゃあ本気で全部当てる方向で頑張る!」
「ウオオオ! なんて良い嫁だよ! ありがとう!」

と、非常に良い感じで進んだ次第。実戦当日。

【8/17 住之江 大阪ダービー第38回摂河泉競走 1R】

▲写真はボートレース公式サイト

はいこれ。午前中に自分で外枠有利なレースを選んだとはいえ、これ如何にも6-3-4来そうじゃない? このレースどう? なんか住之江の特徴なのか番組マンの特徴なのか知らんが、明らかに6を買いなっせみたいな番組が編成がちょいちょいぶっこまれてくる時がありまして、しかもそれが連続する日があるのね。この日もそうなんです。このレースとか荒れるの前提ですけんみたいな雰囲気が凄い。ただくっそ難しい。普段ならこんなの買わないけども、ただ6-3-4が来そうな雰囲気はプンプンしとる。

「これ6じゃんよ。ムサシ(6-3-4)も見えるよな」
「これ……えー……5じゃない逆に」
「5アタマの方がオッズ勝ちはするよね」
「1でもまあそこそこつきそう……ってか、難しくないこれ……」
「だよねぇ……」

このレース、個人的には難易度マックス。ただしオッズはどう転んでも高くなる、穴しかないレースだけど、安定は絶対しない。1から行ったとしてもそこそこオッズはつくので間違いなく面白いんだけど、安定感のアの字もねぇ。編成マンの性格の悪さが際立つレースだと思う。

「上條選手が邪魔なんよ! これ絞れない……!」
「ひろし、これはねぇ……当てさえすればいいのよ。このレースはガミはないよ」

たしかに。おそらくどんな買い方をしても普通はガミはない。これでガミんのは馬鹿である。あんまり馬鹿とかいいたくないけど、これでガミるのは単勝6枠しか思いつかない。あと6-2もか? これ逆に1枠から買ったほうがよくない?

「んー……わたしは1と5と6。2を切る!」
「あらー1入れるか……」
「広くなりすぎるのよ。これ一番人気2でしょ?」
「これねぇ、6なんよ」
「えー……じゃあ6もオッズ負けするしキツくない? 買わない……って選択肢は……?」
「ないね。買わないと」
「もー……。じゃあ、決めた」

【夫の予想】
6-3-4 1点 100円
6-1-2 1点 500円

【妻の予想】
12-12-56 4点 100円
56-65-12 4点 100円

「うわー……ひろし6アタマで固めるんだ。えー、500円いらんくない?」
「はるちゃんも1アタマは抜いていいと思うんだよね……ひよったなぁ」
「ひよってないもん!」

結果!

「うはぁ! やっぱ6アタマやんけ! てかなんや6-3-2って! オイラクソ惜しい!」
「わたしもよ! ほぼ当たっとる!」
「でもこれ6-3-2で3番人気よ……」
「倍率は?」
「15倍くらい?」
「ショボッ! え、6号艇があたまでそれってあるん!?」
「いやー……。今回のレースはたぶんオッズがばらけ過ぎて、結果的に6に寄るのよ。だってみんな穴狙うし」
「クソ……なんやそれ……! 6アタマの3連単で15倍……人気は……?」
「3番」
「マジで……? 6アタマで3番人気……!」

まあオイラがそういうレースを選んだというのもあるのだけどね。そして次のレースがコレ。

【8/17 住之江 大阪ダービー第38回摂河泉競走 2R】

「あー……なんで一枠にB2よ……」
「次も外枠だけど、まあムサシ(6-3-2)狙いならいいんじゃない?」
「これ2枠とかが地味に嫌なんよなぁ……。あと1枠そのまま行ったら穴になんない?」
「どうだろう。万舟見えるよね」
「どんな番組だよ……」
「ひろしが選んだんでしょが!」

【夫の予想】
6-3-4 1点 100円
1-2-56 2点 300円

【妻の予想】
2-16-16 2点 100円
56-56 2点 500円

「あらー……はるちゃん2連単にブッ込んだか……」
「これね、オッズがねぇ、いいのよ……」
「えー……あ、すげえ5-6で47倍だって」
「今回も完全に外枠だし、これでよくない?」
「いやー……オッズ勝ちはそれよなぁ……」

てかB2が1号艇というのは狙わざるを得ず。まー無理よなぁと思ってたらこれがまさかの第1ターンマークでゴチャつきスンッと1号艇が抜き出す展開に。おそらく2号艇アタマはどれが来てもそこそこのオッズ。そしてオイラは1-2-6という一番来そうなのを持っとる。たぶん30倍くらい。300円だったら普通に一万円くらいのリターンになるぜイエーイ! とか思ってたら。

これねぇ、ハラタツのが1号艇が来てなきゃ6-3-4なんすよ。てか1は来ないハズのレースなんよこれは。みてこれ。6-3-4なんよ……。

「難しくねぇこれ……。いやでも、まだ9レースあるし……」
「あ、ゴメンひろし……」

はるちゃんがスマホを観ながらこんな事をいう。それからおもむろに片耳に指をあてつつ何かいいながら、フンクみたいな顔をしながら電話の向こうの相手としばし会話。それからフゥと息をついて。スマホとこちらの会話が混同する。

「ごめん……。なんか仕事入った……」
「え……?」
「はい……はい……あー、そしたら……はい……今から向かいます……」
「……え?」

ようやっと通話を終了したはるちゃんが如何にも腹立たしそうに、でも諦観に満ち溢れた表情でスッと立ち上がってこう言ったのだった。

「ちょっと出社しなきゃ……」

ギュルルルルルン──(早送り)

そして現在に至る。まさか全レース購入、2レースにて中断。なんか嫁さんの会社でトラブルがあったらしく、この日の全レース予想はこれで終わってしまった。そして6-3-4買いに関してはムカつくことに「めっちゃカスっておった」。住之江はその日さらに2レースほど一人で予想したけども、まあ当初の「色々相談しながら買い目を決めるぜ!」という想定とはぜんぜん違うゆえ全然身に入らず。ただ漫然と負債を増やすだけで終わってしまった。

ていうか、二人ともムサシでカスっとるのが非常に腹立たしい。何気に両レースとも怪しい感じだし、これ下手したらずっと買ってたらどっかで当たるぞホントに。特に最初のレースは目を絞ってるだけで6固定でいってれば全然当たってた。つくづく、ボートレースというのは「6を台風の目にするぜ」みたいに据えてる番組次第だと思った次第。

ともあれ、今回は全レース買う気まんまんだったしはるちゃんの合意も得ていたのだけど、ちょっと不慮の状況で断念。次週再チャレンジしたいと思います! 実際やってみて思ったけど、いけるで6-3-4固定買い。マジで全然チャンスある。

 

(挿絵:武尊)

著者プロフィール画像
あしの

浅草在住。猫とホラー映画とパチスロを愛する39歳。パチ7にて『インタビューウィズスロッター』連載中。『5スロで稼げるか?』(www.5suro.com/blog)の中の人。ボートレースはからっきし初学者ですが、自分自身で楽しみながらその面白さをお伝えしていきたいと思います。

人気記事

2ヶ月前に今年のグランプリ覇者を予想してみた。

年間収支大公開! 今年の振り返りと来年の抱負を。

めおと舟 その116『思考停止! 1番人気だけ買ってみよう!』

めおと舟 その115『契約更新までのディスタンス』

やとわれ編集長 岡井のボート事件簿 FILE11 厳格養成所脱走事件

ボートのデザインについてまとめてみたら色々と面白かった件。