めおと舟 その110『サブクエスト:ムサシを当てろ その3』

連載
めおと舟

前回までのあらすじ──。
夫婦揃っての趣味を持とうと始めたボートレース。2019年、2020年と連続でトータル収支マイナスを叩いた夫婦が次に目指すのは「2021年の収支をプラスにする事」。今年こそはと胸に誓いつつも、コロナ禍で巣ごもり状態の二人は他にやることもないまま、代わり映えの無い日常を送るのだった。

腰が痛い。先日「ハーマンミラーの椅子欲しい」つってから痛みが倍増した感じだ。いらんこと書いたので腰が怒ったのかもしれん。あまりに痛い痛い言いながら仕事してたら心配したはるちゃんが「低周波治療器」を買ってくれた。

「はー。ビリビリくる。はーよかたい。これは極楽じゃぁ……」
「もうちょっと強くする?」
「うん。強くしていいよ」
「はいビリビリビリ……」
「おほゥ! いいねぇ……。ビリビリいいねぇ……!」

しかし、最近の低周波治療器はかなりスタイリッシュな形をしとる。オイラが思う低周波治療器ってオムロンとかから出てるやつで、なんかイヤホンみたいな形のさきっぽに平べったいハンペンみたいなのがついてて、それをペタって貼ってビリビリ、みたいな感じなのだけども、はるちゃんが買ったのは黒くて細長い感じ。貼る面積もオイラが知ってるよりデカイし、6つに分かれてる。かっちょいい。

「どう、腰の調子」
「いやー、いいよ。かなりいい。効くんだなぁ低周波治療機って」
「……へへ!」

はるちゃんがポリポリと頭を掻きながら照れる。

8月のある日だ。その日も朝から腰に低周波をブチあてながら仕事をしてたわけだけども、午後からはついに「全レース予想」をやる予定になっていた。今回ははるちゃんも事前に全レース買ってるんで大丈夫。オイラはなるべく直前情報を見てから買いたいので、仕事をしつつその時を待つ。

「腰大丈夫?」
「ん? 大丈夫だよ」
「ビリビリも大丈夫?」
「え? 大丈夫」
「……へへ!」

なんかやたらと低周波治療器の事を気にするはるちゃん。もしかしたらこれ、やりすぎたらダメなやつ?

「そんな事ないよ」
「だよね。びっくりした」
「ホントに大丈夫?」
「……え、なんで? 大丈夫だけど」
「じゃあ、うん。いい」
「……?」

【8/24 ボートレース住之江 日刊スポーツ盾争奪第55回しぶき杯競走 1R】


▲写真はボートレース公式サイトより

今回のミッションは「トータルでプラスを目指す」のと「6-3-4(ムサシ)で当てる」というもの。住之江は内側が強い場なので、6頭はおそらくよほどの事がない限りどれが来ても万舟になると思われる。

「はるちゃんこれ、どれかった?」
「わたしは124のボックス」
「あら、3外した? オイラはこれ、最初だし様子見で。4-23-23。あと6-3-4で」
「これムサシきたらどうなるの?」
「806倍だね!」
「……絶対こん!」

結果!

葛原選手が勝利。2連単3-5のオッズは32.9倍。3と4を頭にして外側で2連単を固めときゃ余裕で浮いてた。けど、終わった後ならなんとでも言えるし。てか345のボックスでも良かったな。

「まー、こんなもんか」
「ねえ、腰大丈夫?」
「え、大大丈夫だよ」
「まだビリビリしてる?」
「してるしてる」
「……へへ」

続いて第2レース。

【8/24 ボートレース住之江 日刊スポーツ盾争奪第55回しぶき杯競走 2R】

「これ大澤選手だろ。3-245-245とか?」
「あとムサシでしょ?」
「そう、ムサシ」
「わたしは……135のボックス買ってる」
「ボックス好きだなはるちゃん」

結果!

「うわっ。オイラ惜しいじゃん3-1-4だって。てか決まり手、抜きだったよ。すげえなぁ……」
「わたしも惜しい。カスったなあこれ……。てか3号艇が強いレースって読めないねぇ……」
「まくりに行くか差しにいくかで2着が全然変わるよなぁ……」
「今のはまくってたわよね」
「まくりに行こうとして、まくり切れず……だけど、バックストレッチで抜いたね。あれまくりきってたら1号艇がずーんと落ちるから、たぶん3-4-2とかになってたんじゃないかな……」

と、終わったあとに言うのは誰だってできるわけで。

「気を取り直して次いこうぜ!」
「うん! あ、腰大丈夫?」
「……え、ああ、大丈夫だけど」
「へへ!」
「ねぇどうしたの、何かあるのかいこの低周波治療器!」
「ううん。なんにもないよ。ただの低周波治療器よ……」

【8/24 ボートレース住之江 日刊スポーツ盾争奪第55回しぶき杯競走 3R】

「これは……2が差して内側が先行するパターンじゃね。2-1-3とか2-3-1とか……」
「わたしは123のボックスにしてる」
「ンー……。どうしようこれ……。いい加減当ててぇし……。うし、2連単にしよう」
「6-3-4のオッズは?」
「972倍だな」
「絶対無理ねぇ」
「そのうちくるさ……!」

ちなみにボートレース住之江の6コース1着率は1.8%。最も6枠が来やすいと言われる平和島で2.1%。当然ルーキーシリーズやレディースレースを含めてその数字なので、一般レースだともうちょい下になると思われる。が、平均するとだいたい4日に1回くらいは6枠が1着になるレースがある計算だ。2着と3着がそれぞれ3号艇4号艇になる確率は、ランダムでやったとして1/20。つまり80日に1回くらいは6-3-4がくる。

「……冷静に考えたらこれ無理じゃね?」
「まあ、ずっと買ってればそのうち来るわよ……!」

結果!

「あらー! 3連単でも当たってた! でも2連単取った! 10.2倍!」
「わたしも獲った! 21.5倍!」
「よしよしよし……。いいぞいいぞ……」
「あー、もっと入れておけばよかった。200円しか買ってない……」
「オイラ300円! とりえあず今日の分は取り返したぜ!」
「わたしもちょっとプラスなった。へへ! 腰大丈夫?」
「ビリビリしてる。大丈夫だよ」
「さあ、のこり9レース。頑張るわよ!」
「おう! オイラたちの戦いはまだこれからだ……!」

……と。その後。残り9レースを我々は全部外した。

「おいおい……。成績ヤバないかこれ」
「酷い……。酷すぎるね……」
「梅雨以降の成績の落ち込みは一体なんだこれ……」
「いや……わたしも何気にすごい落ちてるよ……」
「えーと……ちょっと計算してみっかこれ」

【今回の収支(1/1~8/25)】
購入金額 437,000円
払戻金額 264,540円
収支 -172,460円
購入舟券数 474R
的中舟券数 103R
今期的中率 22% → 22%
今期回収率 63% → 61%
(ムサシ買い14レース含む)

「負けがまあまあインパクトある数字になってきたな……」
「これ思ったんだけど、負け額でそのうちハーマンミラー買えるんじゃないの?」
「グフッ……。それをいっちゃおしまいよ……」
「ところで腰大丈夫?」
「大丈夫だけど……今朝からどうしたの」
「うん、実はね、ひろしが低周波治療器だと思ってるそれ、低周波治療器じゃないの」
「……なんだと?」
「それ、わたしが腹筋を鍛えるために買ったアブトロニクスなの……」
「え!? オイラずっと背筋鍛えてた感じ!?」
「うん。だから大丈夫かな腰……って」

立ち上がって上体をそらし、腰を伸ばしてみる。

「なんか普段より具合いいけど……え、これ低周波治療器としても使えるん?」
「いや……使わないでくださいって書いてあるけど……」
「えっ! なんでビリビリした!」
「なんか気持ちよさそうだったし……いいかなって……」
「うそん! マジで?」
「うん……へへ」

やたらスタイリッシュな形の低周波治療器。6つに分かれた電極面も、よく見たらシックスパックにするぜみたいな形だコレ。

「……ま、いっか。実際腰の痛み軽減したし」
「そうよ。細かいことはいいのよ。へへへ……!」

今これを書いてる最中も、あしのの背筋、ムキムキに改造中だぜ。

 

(挿絵:武尊)

著者プロフィール画像
あしの

浅草在住。猫とホラー映画とパチスロを愛する39歳。パチ7にて『インタビューウィズスロッター』連載中。『5スロで稼げるか?』(www.5suro.com/blog)の中の人。ボートレースはからっきし初学者ですが、自分自身で楽しみながらその面白さをお伝えしていきたいと思います。

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ボートのデザインについてまとめてみたら色々と面白かった件。