めおと舟 その112『歴代のボートレースイメージキャラ』

連載
めおと舟

前回までのあらすじ──。
夫婦揃っての趣味を持とうと始めたボートレース。2019年、2020年と連続でトータル収支マイナスを叩いた夫婦が次に目指すのは「2021年の収支をプラスにする事」。今年こそはと胸に誓いつつも、コロナ禍で巣ごもり状態の二人は他にやることもないまま、代わり映えの無い日常を送るのだった。

ゲッ……。ゲッ……。ゲッゲゲッのゲー……。
あさーはねーどこでグゥグゥグゥ……。

「はぁ、いいねぇ鬼太郎は」
「おらんのに、おるねぇ」

たーのしいな。たーのしいな。おーばけーにゃ学校も……。
試験も何にも……。

「ない!」
「ない!」

9月某日。我々夫婦の間に空前の鬼太郎ブームが訪れていた。

入ったまんま面倒臭いので解約してないサブスクがいよいよ増えてしまい、もはや我が家では観たい時にスッと観る事が出来ない有名エンタメ作品はほぼ絶滅したと言っていい。人類の勝利である。とはいえ、消化できる量には限りがあるゆえ、良く考えるとムダもいいところ。いい加減解約しようぜ。みたいな流れになった。

ただまあ、辞めるにしてもなんか観るのあったら観てからにしようぜ、みたいな感じで念の為にザッピングしてたところ、FODにてなんと「ゲゲゲの女房」があるのを見つけてしまった。なんてこったよ。いよいよヤメれん。

「あー、オイラ観てないんだよなーゲゲゲの女房」
「わたしもみてない」
「これ流行ったよなぁ……」
「流行ったねぇ……」
「みんな『だんだん(ありがとう)』とか『そげですねぇ』とか言ってたよな」
「出雲弁だね! 流行った流行った。じぇじぇじぇと同じくらい」
「えー、これ観る? 出雲弁使っちゃう?」
「えー、いいのぉ? 観ちゃう? 長いよぉ?」

こうして観始めたわけだけど、なんせやっこさん15分ドラマとはいえ156話もありよる。全部観ようと思ったらなかなか骨だ。

めっちゃ面白いのだけど、物理的にイッキ見は不可能だ。ゆえにちまちま分けて観てるのだけども、「ゲゲゲの女房」を観てると「鬼太郎」を観たくなってしまい、んでそっちを観てたら今度は「水木しげるの戦記漫画」が読みたくなったりとかで、もはや収集がつかぬ。

「いやぁ、朝ドラはやっぱいいなぁ……」
「面白いねぇ、面白いねぇ……」

それでも何とか観続けていたのだけど、物語が中盤に差し掛かろうとしたあたりで、はるちゃんが「アッ」と言った。画面には南明奈扮する漫画家志望の女が映っている所だ。

「うわ、南明奈だよ」
「……誰だ?」
「え、南明奈知らない?」
「うん。この人?」
「そう。よゐこの濱口の奥さん」
「知らんなぁ……」
「え、めっちゃ有名だよ?」
「いやー……。オイラはるちゃんと付き合う前の何年間か、ほとんどテレビ観てねぇからさ……。なんか時代時代でスポッと抜けてるんだよね」
「へー……。そうなんだ……。あ、ひろしお茶居る?」
「うん。いる」
「じゃあ持ってくるね」

はるちゃんがお茶を汲みに行く。南明奈……。南明奈……。なんとなく気になってスマホで調べ、そうして概要を読んでぽんと膝を打った。ああ、これアッキーニャの人じゃないか。

「はるちゃん、はるちゃん、分かったよ」
「ん? どうしたの」
「南明奈って、アッキーニャだね」
「そうそう。そういえばやってたね。どのアッキーニャが好き? みたいな」

アッキーニャ。これは観たことがある。ボートレースのCMである。6色の猫コスをした女の子が「どのアッキーニャが好き?」とかいう破廉恥なヤツだったけども、そうか、あれが南明奈か……。

「てかアッキーニャって濱口の奥さんだったのか……」
「うん。有名よ」

よくよく考えても見れば、オイラは普段録画やサブスクばっかであらゆる番組を観てるので、ボートレースのCMというのを知らぬ。今何やってるかも知らん。これはボートレース関連で物書きをさせて頂いてる身としては、不勉強極まりない。

「……ダラッ!(ばかたれ)」
「あ、出雲弁だ。どうしたの?」
「いやもう、自分の迂闊さに……ダラッ!(ばかたれ)」
「ヘヘ……じゃあわたしも……自分にダラッ!」
「いやさあ、オイラ、ボートレースのCMについて完全に無知なんよ」
「それはもうダラズねぇ」
「な。だからもう、勉強しよう? この機会にさ」
「そげですねぇ!」
「おっ。使いこなしてるね」
「だんだん」

というわけで調べてみた。

 

【1993年】「寺田恵子」がCMに登場。

「なになに……最初にボートレースのCMに登場したのは寺田恵子……早速知らんな」
「わたしも……。ちょっと調べてみよう」
「うん……ええと、寺田恵子さんは日本のロックシンガー……ロックシンガー?!」
「なんのバンド?」
「『SHOW-YA』……あら! 『SHOW-YA』の寺田恵子か! アイドルちゃうやんけ!」
「あー! 初代って寺田恵子だったんだ!」
「『限界LOVERS』だよ。なぁ!」
「うわー、全然イメージないねぇ」
「すげえチョイスだなぁ……」

ちなみにこれ以前にもボートレースCMというのはあったらしいのだけど、ボートレーサーが出演するものがメインであったとのこと。従って厳密に言うと「タレントがCMに出演した第一号」であったと思われる。今みたいにポスターになったりボートレース場でイベントしたりとかそういうのがあったかどうかは不明なり。また放映期間(就任期間)も不明。おそらく今みたいにCMやら何やらを全部ひっくるめた上で期間を区切っての契約じゃなくて、CM一本のギャラだったと思われ。従って寺田さんはどうやらイメージキャラにはカウントされないようだ。

 

【1999年】役所広司がCMに登場。

「寺田恵子ときて役所広司だよ。寺田と役所って地図記号みたいだね!」
「ダラッ!」
「てか男性が起用されるのな」
「今って女性をボートレース場に呼ぼう! みたいなのが大命題になってるけど、当時は今いるファンに向けたCM、みたいなのがメインだったのかな」

役所広司といえばカンヌで監督賞とった「バベル」に出演してからこっちスーパー大御所俳優みたいなイメージなんだけど、1999年にはボートのCMに出てた模様。これもオイラ観たことない。このときもあくまで「CM出演」のみであり、キャンペーン展開等は無かったようだ。もしそういう展開をするんであればおそらく別に女性を立てるかしたと思う。

 

【2002年~2003年】遠藤久美子が初代イメージキャラクターに就任(キョーテーハニー)

「エンクミ……!?」
「エンクミだね」
「エンクミっつったら、あのエンクミだよね」
「どのエンクミ言ってる?」
「あの犬顔というか、目がくりっとした」
「えーと、そう。たぶんそれ」
「へぇ……初代イメージキャラクターだって。しかも名前が『キョーテーハニー』」
「ダジャレ! 初代がダジャレでいいの? ねぇ、いいの?」
「いいんじゃないか? アッキーニャもダジャレだし。そういう文化はここから既に出来上がってたのかもしれん」

記念すべき初代イメージキャラクターは遠藤久美子。CMを探して観てみた所、どうやらキョーテーハニーというのは、ターンマークのブイを被ったエンクミのことです。ちなみに現在「キョーテー(競艇)」という言葉は全て「ボートレース」に置き換えようね、みたいな流れになっておるのですが、このキャンペーンの存在により、少なくとも2003年までは業界的にも「競艇」でいってた感じなのが分かる。

 

【2004年~2007年】優木まおみが2代目イメージキャラクターに就任。

「わお! まおみんじゃん! 佐賀県出身のロシアンクオーター! しかも東京芸大卒のエロかしこいマルチタレント。属性付きすぎだぜ!」
「あ……わたしこれ知ってるかも。なんか観たことある」
「まじで? オイラどうだろう……。まおみんがテレビに出まくってた時は知ってる。けど、CMはあんま覚えてないなぁ……。当時から録画したやつをすっ飛ばしながら観てた気がするし、そもそもオイラ、CMってジャンルが弱いのかもしれん」
「いやー、でもわたしも怪しいよ。たぶん観たことあると思う……くらい」

最初の長期政権は優木まおみ。彼女が選ばれたキッカケは、彼女自身が日本・中国のハーフである父ちゃんと、ロシア・中国のハーフである母ちゃんの間に生まれたクオーターであるかららしい。つまり「競艇を世界へ」という明確な目的の元に選出されたイメージキャラクターであり、そういう意味ではまさしく本来の意味的に非常に正しい人選であります。

なおこのタイミングで「競艇」を「ボートレース」に改称しようという動きが出始め、2010年を持って正式に全ての表記が「ボートレース」に切り替わっておるとの事。「法律に競艇法ってあるやんけ」と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、正式には「モーターボート競走法」ですけん。

 

【2008年~2009年】和田アキ子が3代目イメージキャラクターに就任。

「アッコさん……!」
「アッコさんパチンコのCMもやってるよね」
「マルハンね。時期もニアミスかもなぁ。まあ別にかぶっててもいいんだけども」
「ちなみに本人もボート好きなんだってさ。だからたぶん歴代のイメキャ・CMタレントの中ではダントツでファン寄りだと思う」

一応調べてみた所、マルハンのCMは任期終了の翌年との事。被ってたら被ってたでまた倫理的な考察の余地もあったんだけど、流石にそこは外してる模様です。なおアッコさんは2009年の紅白で「もう一度ふたりで歌いたい」を披露。連続33回出場を決め、この時点では紅組での出場回数トップの座に君臨していました。CMではなんと峰竜太選手と熱い抱擁を交わしています!(峰選手、ビビって腰が引けてる)

 

【2010年~2013年】南明奈が4代目イメージキャラクターに就任(アッキーニャ)

「アッキーニャ!」
「あ、もっと長いかとおもったら3年なんだ……」
「オイラこれで『ボートレースって6色なんだ』って知ったよ」
「あー、わたしもかも……」
「完全にオタク……というか、今までボートに興味なかった層へ訴求しようとしてるよね。だってアッコさんの後でアッキーニャぞ。アしか合っとらん」
「多分だけど、これが一番有名よね」
「世代にもよるんじゃない? でもまあ、オイラたちの世代ではそうだねぇ」

アッキーニャ、のイメージが強いこの期のイメージキャラですが、当初は千原ジュニアとタッグを組んだスポーツ記者モノだったらしいです。なんかそれもオイラ覚えてるんですけども、すぐに千原ジュニアが消えて「アッキーニャ」シリーズに移行。話題になったのはたぶんそこからでした。黒は俺が貰った。じゃあ俺が青を。当時はそんな会話が街中で囁かれていたそうです。嘘です!

 

【2014年】渡辺直美さんが5代目イメージキャラクターに就任(ニセアッキーニャ?)

「あったー! これ覚えてるわ」
「渡辺直美が猫の格好して踊るやつだ」
「そう。アッキーニャと見せかけて渡辺直美なんだよね」
「あれ、単年で終わってるんだ……」
「ね。たった一年なんだなぁ……」

アッキーニャが話題なった後なので一部で注目されていたボートイメキャ。蓋を開けてみれば渡辺直美を起用したアッキーニャのセルフパロでした。見た目のインパクトはありましたが出オチ感も否めず。ごく短期間にて終了してしまいました。

 

【2015年~2016年】すみれさんが6代目イメージキャラクターに就任(BOATNYA)

「あー、蝶野と一緒に出てるのは覚えてるわ」
「あったあった。トレンディエンジェルとかも出てきたよね」
「かなりにぎやかになってるなぁ」
「登場人物増えてきてるよね」
「ドラマ仕立てってこの頃から?」
「いや、この辺はドラマっていよりカオスな世界観……ソフバンのCM作った電通のプランナーなんかに影響受けてる人が作ってるか、あるいは本人が噛んでる気がするよ。まあこういうCM流行ってたからね」

この時のCMは「水の都・BOEDO CITY(ボエドシティ)」を忍者が守る、意外なゲストも毎回でるぞ、みたいないわゆる白戸家系。この頃はこんなCMばっかだったのであしからず。

 

【2017年~2019年】渡辺直美さんが7代目イメージキャラに再就任(NAOMI)

「あー、渡辺直美が長かったのってこれのせいか」
「再就任してるのね……」
「田中圭もこの期に登場してるんで、オイラたちはこの辺でようやく実際に場に行き始めるわけだね」
「スタンドポップとか看板とかポスターとか、場にいったらめちゃくちゃあったもんねぇ」

第二次渡辺直美時代は3年間。第一次と併せて直美期は通算4年あり、トップタイの長期政権となっています。1年目は直美アンドBENI。2年目は直美アンドロバート。ここまではまだ直美感がありましたが、3年目では「おっさんずラブ」でグイグイ来てた田中圭が出演。人気の面で完全に直美を喰っており、誰がイメージキャラかわからぬ状況に。采配の妙というか、事故でした。

 

【2020年】多数の俳優を採用したドラマCM始まる。

「これも話題になったねぇ……」
「ハートに火を! ってやつだよね」
「そうそう。なかこれアレに似てんだよ。モンキーターン」
「そう?」
「いやまあ、オイラもCM全部は観てないんだけど、なんかそんな感じする」

前回の結末を猛省したのか、明確にドラマの側面を打ち出したコンセプトのCMに田中圭を採用。その他にも武田玲奈、葉山奨之などを配置し、ボートレースを題材にした群像劇に仕上げている。似たような「ドラマ風CM」って今までにもあったけど、これだけしっかり作り込んでるのってそう無いと思った。

ネット環境がないお年寄りとかは絶対全部観れないんで、狙いを「田中圭で釣れる若い女子」に絞ってるのもマーケティングとしては大変正しいと思う。

そして2021年現在……!

「今年もドラマCMやってんだって」
「なんかやってるよね。でもオイラCM飛ばしちゃうから観てないんだよな……」
「大丈夫、特設ページから全部見れるみたい」
「あ、そうなん?」

>>ボートレーサーになりたい! 公式サイト

「うわー、また若いイケメンと美女を配置しとるなぁ……」
「MEGUMIでてる! てか飯尾が続投……!」
「てかボートレース、プロモーションにすげー力入れてるよねぇ」
「ちょっと他の業界ではないよねこういうの」
「今8話まで公開されてんのか……。ちょっと観てみる?」
「うんいいよ」
「156話ある朝ドラより、簡単にみれるしさ!」

さてアッキーニャを入り口にして調べてみた「ボートレースイメージキャラ」。本文中にもあるようにオイラがCMをすっ飛ばして番組を観てるのもあるけど、その殆どを知らない、あるいは観たことがないものだった。個人的に衝撃だったのは和田アキ子さんが峰選手を抱きしめる2008年頃のCM。このCMは峰選手以外にもモンキーターンの主人公・波多野のモデルとなった濱野谷憲吾選手、それに魚谷智之選手や中野次郎選手、など「イケメン」で知られる(当時の)若手選手が登場するなど、ボートレースファン垂涎の一品となってる上、イケメンは正義ゆえ外部に向けたアピールの役割も存分に果たしておるという、業界CMとしては出色の出来となっているように思った。

他にも大きいお兄ちゃんたちの間で話題になったアッキーニャのCMはもちろん、田中圭さんの一連のドラマ風シリーズや今作の本格連続ドラマCMなど。ボートレースCMってかなり攻めてるのが多い。

他の公営競技というと一時期「別府競輪の男たち」というそのまんまの名前のCMシリーズがバズってたけど、もしかしたらこれら「公営競技のCM」って「ギャンブルである」とう大前提があるからこそ、明るかったり笑えたり爽やかだったりみたいな方向性で振り切ってイメージアップを図る必要があり、だからこそ一般商品・サービスのCMより、いい意味で奇妙なものが生まれやすい土壌があるのかもしれないな、とか思った。

まあオイラが知らんかっただけで、アッコさんのCMもすげー有名っぽいけども、もしご存知じゃない人がいらっしゃいましたら、一度見てみるといいかも。ボートレースがもっと好きになるかも知れぬ。少なくともオイラの中でのボートレースは今更またイメージアップしたもんね。

(挿絵:武尊)

著者プロフィール画像
あしの

浅草在住。猫とホラー映画とパチスロを愛する39歳。パチ7にて『インタビューウィズスロッター』連載中。『5スロで稼げるか?』(www.5suro.com/blog)の中の人。ボートレースはからっきし初学者ですが、自分自身で楽しみながらその面白さをお伝えしていきたいと思います。

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